フォニックスの指導方法
子供英会話・フォニックス指導(先生向け)
フォニックスとは何か?
フォニックスとは、英語の「音」を「文字」に結びつけるためのルールのことで、英単語のスペルと発音の関係を規則化して教える教授法のことです。
フォニックスを習得することによって、既に認知済みの言葉を読めるようになり、日本語での意味の理解を容易にすることができます。
また、別の効能として、意味を全く知らない単語でも、読めるようになることによって文章の音読に繋がり、必ずしも明確な日本語での意味の理解を伴わなくても歌の歌詞を読んだり、詩を読んで英語らしい韻を含んだ文章のリーディングを可能にします。
実は最終的には後者の方が重要で、音声教材が充実している今日の状況であっても、自力で未知の単語を読むことが出来る、という能力を養うことによって、各種試験に役立つことはもちろん、単語の類推能力を高めてくれます。
段階的に接頭語や接尾語の意味を理解したうえで、発音記号の習得などの助けが加わると、英語のリーディング能力は飛躍的に向上していきます。
近年では、多くの英会話教室でもこのフォニックスを取り入れて子供への英会話指導を行っていますが、ここでは、フォニックスを子供たちに教えるメリットやコツなどについてご紹介します。
アルファベットは母音と子音に分かれています
アルファベットはご存知のように母音 vowels と子音 consonants に分かれます。
vowels は a e i o u の5文字、 consonants は左記5文字以外の21文字です。
注意点としては、w と y は、時々母音の代わりをすることがあるということです。
たとえば、cry や fry など子音字の後の y は母音となり、yes young など母音字の前では子音の働きをするなど、指導する際注意が必要なことがあります。
その他、queen quick の u は u = w と発音するというルールは、フォニックスを知らなくても何となく皆さんもご存知ですよね。
フォニックスを指導する際には、母音と子音について、まずしっかりと理解・認識をする必要があります。
フォニックスを導入していく順番のおすすめ
次に、フォニックスを指導する順番についてのご提案です。
もちろん、必ずしもこの順番通りでなくても生徒に合わせてチョイスして頂ければ良いのですが、自身の経験として教えやすくかつ生徒にとっても理解しやすい順番ということでご紹介します。
まず一番初めに子供たちに覚えてほしいのは、アルファベット・サウンドです。
特に、初めて英語に触れる生徒さんには、alphabet nameと alphabet soundを同時進行で教えると良いと思います。
alphabet name : アルファベットの名前、 エイ、ビー、スィ・・・
alphabet sound : アルファベットの音、アッ、ブッ、ク・・・
次に教えておいてほしいのが、子音です。
フォニックスルールの例外がほとんどないので、指導もしやすいし、学ぶ方も理解しやすいです。
ところで、日本の小学校では中学年でローマ字を学びますね。
ローマ字を知っている子供のほうがアルファベットを達者に読むことが出来るため、指導もしやすいような気がします。
しかし、日本語は全て母音のみか子音と母音の組み合わせになっているため、ローマ字を習うことによって、子音だけの音の理解が難しくなる、という弊害が出てきてしまいます。
そこで、可能ならば、例外の少ない子音は是非小学校でローマ字を学ぶ前に導入してみて下さい。
子音が終わったら、短母音 → その他、silent [e] や二重母音等のルール の順番に指導していくと、徐々に理解が深まっていって良いでしょう。
フォニックスは、あくまでも英語を学ぶツールの一つです
上記でご案内した指導順については、あくまでも個人的な指導経験からの提案ですので、生徒の興味・理解度・講師の指導の中でのフォニックスの位置付け・教えやすさなどからおのずと指導方法は変わってくると思います。
生徒もリスニングが得意な子供(先天的に耳の良い子や音感が良い子、発話が好きな積極的な子など)もいれば、耳や鼻に持病があったり発話が苦手な子供など様々で習得にも個人差がありますので、取り入れ方にも注意を払い英語のレッスン自体が苦痛になることのないようにして下さい。
あくまでも英語を学ぶツールの一つですので、ゲームに取り入れたりしながら英語を読むことができたという達成感を味わっていただけるように楽しんでフォニックスを活用して頂きたいと思います。
次に、具体的なアルファベット・サウンド、子音、短母音等の指導の方法についてもご案内します。
指導をする順番1「アルファベット・サウンド」
フォニックスの指導については、特に順番の決まりというものはないのですが、まずはアルファベットの音について子供たちが十分に理解してくれないと、なかなかその先の理解は難しいですので、まずはアルファベット・サウンドについてしっかりと定着させてください。
前述した通り、アルファベットにはエイ、ビー、スィと読んでいく alphabet name(アルファベットの名前)のほかにアッ、ブッ、クと読んでいく alphabet sound(アルファベットの音)があります。
未就学児~小学校3・4年生ぐらいまでのお子さんにアルファベットを導入するときには、アルファベットにはalphabet name と alphabet sound の2つがあることを認識してもらいましょう。
そして、カルタやビンゴなどのカードゲームを使って、楽しみながらたくさん練習をしていくと良いでしょう。
この時に注意することとして、出来るだけ小文字を使っての練習をお勧めします。
よく大文字は分るけど、小文字をきちんと覚えていないという話を聞きますが、英語の文章はほとんど小文字での構成となっています。
両方を教えたあとは出来るかぎり小文字のみで進めるほうが良いというのが実感です。
文章の書き出しのみ大文字という大前提のみ教え、基本は最初から小文字で書く習慣をつけさせることが高学年~中学生へのスムーズな橋渡しとなります。
指導をする順番2「子音」
アルファベットの個々のサウンドを一通り教えた後は、子音か短母音について教えると良いでしょう。どちらからでも大丈夫ですが、ここではまず子音の指導についてご案内をします。
子音の一番のポイントは voiced(有声音) と voiceless(無声音) に大別されるということです。
まずは、「セットで練習していくと分りやすい子音」から始めましょう。
たとえば、[p]と[b] は口の形・息の出し方は全く同じで、違いは [p] が息だけの無声音で [b] は息に音を伴う有声音ということになります。
同じく [t] と [d]、[f] と [v]、[s] と [z] もセットで練習すると良いでしょう。
なお、[c] と[g] はそれぞれ2つの音があり、この関係が当てはまるケースだけではないので、ここでは省いても構いません。
次に、セットで覚える以外のvoicelessの子音についてです。
セットではなく単独で導入できる無声音としては [k] [h] [q] [x] があります。
無声音が終わったら、次は有声音です。
セットではなく単独で導入できる有声音としては [j] [l] [m] [n] [r] [w] [y] があります。
子音のリスニング・チェック方法としては、既習の単語を発音し、その単語の一番目の文字(initial letter)をカルタ形式で取らせたり、子音のみのBINGOなどがあります。
ライティング・チェックも出来ます。
短母音を挟む3文字の文字カードの真ん中の母音と3番目の子音のみを予め記入しておき、講師が発音して一番目の文字(initial letter)を小文字で書かせて確認させるのです。
たとえば、[_at] [_en] などと書いておき、[cat] [ten] と講師が発話し、正しく[c] [t] を書き埋めることが出来ればOKです。
可能であれば[_a_] [_e_]と母音だけを書いておいて、finel letter についても書き取りをさせてみましょう。
指導をする順番3「短母音」
母音には短母音とalphabet nameの音である長母音や二重母音がありますが、まずは例外の少ない短母音のみを取り上げます。
フォニックスの指導ではまず例外が極力少ないルールから導入するというのが大前提です。
生徒の理解はもちろん先生にとっても指導がしやすいからです。
ご存知のように、大きくわけてイギリス英語とアメリカ英語では、母音はかなり違いますが(特にaとo)あまり深く考えずに、ご自身が学んだように教えれば良いと思います。
まず、小文字のアルファベットカードを用意します。この時母音の[a] [i] [e] [o] [u] のカードだけ、色を変えておきます。
次に、色を変えた母音のカードを含む3文字の単語を作成し発音させます。
例) [p] [e] [n] → pen
発音出来たら、[e] の場所を他の母音カードに変更して発音させてみます。
[pan] [pin] [pun] [pon]
慣れてきたらスピードアップして5枚の母音カードをテンポ良く変えてゲームのようにしても良いでしょう。
欲張らずに3文字限定で練習し定着を図ります。語頭の子音も変え、難度を上げてアレンジも可能です。
出題する単語の意味については未習であってもここでは説明しなくても大丈夫です。
まずは「読めた!」という感動を味わうことが出来れば成功です。
次に、リスニング・チェックです。
真ん中の短母音を変えた2組の3文字の単語を用意して、いずれかを発音し、正しく聞き取りが出来るかどうかをチェックしましょう。
例)[map] と[mop] [bag]と [bug] [cat]と [cut] [pen]と [pin]
ほかに、フラッシュカードのように次々と3文字の単語カードを見せて読み終わる速さを競わせるスピード・リーディングの方法も有効です。
例) [not, sad, red, wit, run]
[pot, had, bed, sit, sun]
[hot, dad, Ted, hit, fun]
定着してきたら、[rat] → [land] → [stand] のように三文字→四文字→五文字と順番に単語を長くしていきます。
理解度の早い子供には発展的な練習として短めの文章を読ませていってもよいでしょう。
次に、その他のフォニックス・ルールの指導についてご案内します。
フォニックス・ルール「サイレント・イー」
単語の最後が [e] で終了し、発音しない(silent)場合は、[e] の前の短母音は alphabet name音に読み方が変わるというルールです。
説明ですと分かりにくいのでいくつかの例を見てみましょう。
[cut] ⇒ [cut] + [e] ⇒ [cute]
[hat] ⇒
[hat] + [e] ⇒ [hate]
いずれも、 [e] をプラスすると、前にある短母音がalphaet name音に変わっていますね。
大変役に立つルールなのですが、中学でも必須で使用頻度の高い動詞 [have] [give] [live]
などがこのルールが当てはまらず、例外が多いのが難点です。
練習方法としては [e] のカードの色を変えて、短母音を含む様々な3文字の単語に [e] を加えたり外したりして、テンポ良く読ませて行く方法があります。
最初は既習の単語から始め、徐々に未習の単語も取り入れていってみましょう。
その他のフォニックス・ルールは小学校高学年以降での指導がおすすめ。
今までご案内してきたアルファベット・サウンドや短母音、子音、などの指導については、幼児から小学校低学年さんであっても何とか楽しみながら導入が可能です。
その後のサイレント・イーあたりからのルールは例外も多くなり、少しずつ難しくなってくるため、これ以上は小学校高学年以上で徐々に子供の興味も考慮しつつ進めていくと良いでしょう。
【Consonant Digraphs】
2つの子音で一音を表すルールです。
使用頻度の高い単語も多く中学入学後もすぐ役立つルールです。
該当するものとしては[sh] [ph] [wh]
[ng] [tch] などがあり、これらは例外がありません。
また、複数の読み方があっても全て規則性があるので[ch] [th]
も、ぜひ一緒に練習してください。
短母音と子音をそれぞれ一文字づつ加えた単語(例: [ship] [what]
など)の読みから、カードを使って練習をしていきましょう。
【Consonant Blends】
2つもしくは3つの子音の連続で、連続子音とも呼ばれており、[bl] [gr] [sk] [tr] [spr] [str]
などがあります。
これは発音矯正の練習にもなります。
文字カードを使用するなどして、テンポよく音読練習をすると良いでしょう。
練習するポイントとしては、素早く母音を入れずに発音することです。
[bl]の場合: [bl, bl, blend] [bl, bl, black] [bl, bl, blue] など [b]+[l] を 1+1=2の速さではなく、1+1=1.5の速さで、間に母音を入れずに発音をさせます。
中学校での学習英単語も意識して。
小学校高学年に指導する場合は、中学の学習指導要綱も考慮しつつ、中学3年間で学ぶ単語から重要と思われるものを優先的に教えられても良いと思います。
例えば、<Polite Vowels> というルールがあります。
「母音字が2つ並列する際最初の母音のみアルファベット読みする」という ルールなのですが、たとえば [ea] が含まれる単語で、中学校で学ぶ単語はイーと発音する場合が非常に多く、エと発音されるのはそれほど多くありません。
[head, bread, breakfast, heavy] などのほか、いくつかの不規則動詞の過去形・過去分詞だけが該当するでしょう。
同様に [ch] はチと読むケースが多く、[c, k, ck] と同じ発音で読むのは、[school, ache, Christmas,
chorus, stomach] など、限られています。
フォニックスに限らず、段階的に接頭語や接尾語の意味の理解や発音記号の習得の助けが加わると、子供のリーディング能力は飛躍的に向上します。
リーディング力が向上すれば、その他のライティングやリスニング、スピーキング力も同時に伸びていきます。
指導者としては、フォニックスだけにこだわることなく、色々な側面から英語にアプローチしていき、子供たちには
「出来た!」
「言えた!」
という成功体験を多く与えてあげるようにして頂ければ、と思います。